2009年02月12日(Thu)
アメリカ映画を観る
2月に入って突然の発熱に「A型インフルエンザです」と診断され、一週間ほどおとなしくしていた。
早朝の散歩も本堂でのお経もやめて寝ているのはなかなかよいものだ。
法事も見習い中の弟子に代わってもらった。
2,3日で回復したが、人と接してはいけないというので、映画をレンタルして観た。
アメリカ映画の大統領暗殺ものや政治的謀略ものがおもしろかった。
「バンデージ・ポイント」「ザ・シューター」「ザ・センチネル」「ボーン・アイデンティティ」シリーズ「ブラッド・ダイアモンド」「パール・ハーバー」等々。 『仁義なき映画論』にビート・たけしが書いている。
「アメリカ人ってのは粗雑に見えて、その実、したたかだからな。ベトナム戦争に負けて大損したように見せといて、戦争で使ったカネを戦争映画ですっかり回収してるじゃない」
お茶を飲みせんべいをかじりながらみているうちに、映画のすじがすけてくる。
まず、アメリカはこんなにも悪辣な権力行使をするということを描く。
自虐的だ。
そこにヒーローが出て、謀略をあばく。
アメリカには復元力があります、というわけだ。
まあ、しかし、じつは強大な国家はつまるところ国民の幸福のためなんですよというプロバガンダ。レニ・リーヘンシュタール監督に映画を作らせたヒトラーとちがわない。ハリウッドを通じてまず広大なアメリカ大陸の国民に宣伝し、ついで世界中を洗脳しようというわけだ。
「パール・ハーバー」を観ると、なんとも日本人が奇妙に描かれている。
そしてアメリカ人がけっして真珠湾を忘れていないことがわかる。千百人の乗組員とともに戦艦アリゾナはいまだ海中に保存されているようだから。
そしてルーズベルトの報復宣言はヒロシマ・ナガサキへと向かったのではなかろうか。「9・11」がイラクやアフガニスタンの戦争を導いたように。
最近、西木正明氏の「ウエルカム ツウ パール・ハーバー」が書店に並んでいる。ささやかれていたうわさ「ウエルカム ツウ ワールド・トレード・センター」は、まさか。
でも、アメリカ映画に描かれた謀略を観ていると、つい、そうかもしれない、と思う。まず、たたかせ、そして、何倍もたたきかえす‥‥アメリカ。
人間の最古の感情、報復こそ、人間が克服しなければならないものだろう。
ブッダは「怨みをすててこそ(うらみは)息む」と述べている。
早朝の散歩も本堂でのお経もやめて寝ているのはなかなかよいものだ。
法事も見習い中の弟子に代わってもらった。
2,3日で回復したが、人と接してはいけないというので、映画をレンタルして観た。
アメリカ映画の大統領暗殺ものや政治的謀略ものがおもしろかった。
「バンデージ・ポイント」「ザ・シューター」「ザ・センチネル」「ボーン・アイデンティティ」シリーズ「ブラッド・ダイアモンド」「パール・ハーバー」等々。 『仁義なき映画論』にビート・たけしが書いている。
「アメリカ人ってのは粗雑に見えて、その実、したたかだからな。ベトナム戦争に負けて大損したように見せといて、戦争で使ったカネを戦争映画ですっかり回収してるじゃない」
お茶を飲みせんべいをかじりながらみているうちに、映画のすじがすけてくる。
まず、アメリカはこんなにも悪辣な権力行使をするということを描く。
自虐的だ。
そこにヒーローが出て、謀略をあばく。
アメリカには復元力があります、というわけだ。
まあ、しかし、じつは強大な国家はつまるところ国民の幸福のためなんですよというプロバガンダ。レニ・リーヘンシュタール監督に映画を作らせたヒトラーとちがわない。ハリウッドを通じてまず広大なアメリカ大陸の国民に宣伝し、ついで世界中を洗脳しようというわけだ。
「パール・ハーバー」を観ると、なんとも日本人が奇妙に描かれている。
そしてアメリカ人がけっして真珠湾を忘れていないことがわかる。千百人の乗組員とともに戦艦アリゾナはいまだ海中に保存されているようだから。
そしてルーズベルトの報復宣言はヒロシマ・ナガサキへと向かったのではなかろうか。「9・11」がイラクやアフガニスタンの戦争を導いたように。
最近、西木正明氏の「ウエルカム ツウ パール・ハーバー」が書店に並んでいる。ささやかれていたうわさ「ウエルカム ツウ ワールド・トレード・センター」は、まさか。
でも、アメリカ映画に描かれた謀略を観ていると、つい、そうかもしれない、と思う。まず、たたかせ、そして、何倍もたたきかえす‥‥アメリカ。
人間の最古の感情、報復こそ、人間が克服しなければならないものだろう。
ブッダは「怨みをすててこそ(うらみは)息む」と述べている。
2009年01月27日(Tue)
宮沢賢治は先輩
昭和8年宮沢賢治が37歳で亡くなって7年目の昭和14年に詩人の草野心平が編集した『宮沢賢治研究』(十字屋書店)を古書店の棚に見つけた。
高村光太郎や谷川徹三など錚々たる人たちが文章を寄せている。
賢治は没後すぐに有名になったのだ。
詩人・中原中也の文章も収録されていて、彼は賢治の詩集『春と修羅』が出版されて翌年か翌々年に手に入れて「この書は私の愛読書となった。何冊か買って、友人の所へ持って行ったのであった」と述べているから、愛読したのであろう。事実、中也の詩集をひもとくと賢治が多用したことばが使用されている。
古書としてもひどく汚れているこの本を買ったのは、書き込みに興味を持ったからだ。
かつて、この本を購入し所蔵した人がその理由を次のように書いていた。
農科二部(農芸化学科)の先輩賢治に より近づくための一生でありたい為に購ったこの本である
旧蔵者は賢治が学んだ盛岡高等農学校の後輩だったのである。
賢治を教えた関豊太郎も文章を寄せているが、旧蔵者は「恩師」と書き込みをしている。
書き込みのあるこの本をめくっているうちに、昭和10年代が急に身近になった。
すでに日中戦争さなかの日本である。
食糧もしだいに窮乏していたころではないか。
必死に食料増産に取り組んでいたに違いない。
華麗な語彙を多用した賢治の晩年はそうした時代とは無縁ではない。
さて、現代である。
食糧自給率は40%を切り、他に多くの懸案があるにもかかわらず、定額給付金でもめている状況は、あまりにおそまつではないのか。
危機は今、そこに迫っていても気づくことがむずかしい。
農業に取り組んだと思えるこの本の旧蔵者はその後、どのような運命をたどったのだろうか。
私たちにはどのような未来が待っているのか。
高村光太郎や谷川徹三など錚々たる人たちが文章を寄せている。
賢治は没後すぐに有名になったのだ。
詩人・中原中也の文章も収録されていて、彼は賢治の詩集『春と修羅』が出版されて翌年か翌々年に手に入れて「この書は私の愛読書となった。何冊か買って、友人の所へ持って行ったのであった」と述べているから、愛読したのであろう。事実、中也の詩集をひもとくと賢治が多用したことばが使用されている。
古書としてもひどく汚れているこの本を買ったのは、書き込みに興味を持ったからだ。
かつて、この本を購入し所蔵した人がその理由を次のように書いていた。
農科二部(農芸化学科)の先輩賢治に より近づくための一生でありたい為に購ったこの本である
旧蔵者は賢治が学んだ盛岡高等農学校の後輩だったのである。
賢治を教えた関豊太郎も文章を寄せているが、旧蔵者は「恩師」と書き込みをしている。
書き込みのあるこの本をめくっているうちに、昭和10年代が急に身近になった。
すでに日中戦争さなかの日本である。
食糧もしだいに窮乏していたころではないか。
必死に食料増産に取り組んでいたに違いない。
華麗な語彙を多用した賢治の晩年はそうした時代とは無縁ではない。
さて、現代である。
食糧自給率は40%を切り、他に多くの懸案があるにもかかわらず、定額給付金でもめている状況は、あまりにおそまつではないのか。
危機は今、そこに迫っていても気づくことがむずかしい。
農業に取り組んだと思えるこの本の旧蔵者はその後、どのような運命をたどったのだろうか。
私たちにはどのような未来が待っているのか。
2009年01月09日(Fri)
本阿弥光悦
昨年秋、アメリカ発の金融恐慌の嵐が収まらぬまま年が変わった。
お正月行事のあいまに加藤廣『謎手本忠臣蔵』を読んだ。
日本人の「忠臣蔵」理解は当時の幕府実力者柳沢吉保の巧みな情報操作の結果と見る著者はその「あとがき」に次のようなことを書いている。
ザカリアスは、この回顧録で、終戦の翌日、「日本人の精神を効果的に、心理的に再教育するという広汎な計画にとりかかった」と記している。「ウオー・ギルト・インフオメーション・プログラム(戦争の罪を日本に教え込む計画)」は、こうして立案された。それは、敢えていえば、十七世紀に始まった欧米の長い長い「アジア侵略の歴史」を空っとぼけて、最後の日本の侵略主義だけに「すべての罪をなすりつける」アメリカのご都合主義の産物であった。(略) 日本は、このザカリアスの占領政策に、ものの見事にはまった。今もこの影響は続いているのではないか。
続いているのだと思う。
昨今の事態もアメリカの金融政策・経済構造政策に追従しての結果ではないのか。
そのうえ、財界人の多くは、すべてはアメリカの今年の景気しだいと年等の挨拶で言う。
これを嘆いて「田母神論文」のごときものが現れてくるわけだ。
もちろんアメリカに学ぶべきことは多い。A・ワイエスの絵に見られる精神などがそうだと思う。
他国に影響を与えるアメリカの精神の源泉だ。
では日本が誇りをもって輸出できる文化はなんだろう。
アニメや漫画だとよく言われる。でもそれだけでは、すこし悲しいではないか。
そこで私は必要もあって『本阿弥行状記』を拾い読みした。
灰屋紹益が「世に有へき人間とハ覚侍らず」と絶賛した人物である。
『行状記』には「光悦は一生涯へつらい候事至つて嫌ひの人にて、殊更日蓮宗にて信心あつく候‥」(第50段)と語られている。
私たちはこのような人物の行いの有様に、もっともっと心を寄せる必要がありはしないか。
お正月行事のあいまに加藤廣『謎手本忠臣蔵』を読んだ。
日本人の「忠臣蔵」理解は当時の幕府実力者柳沢吉保の巧みな情報操作の結果と見る著者はその「あとがき」に次のようなことを書いている。
ザカリアスは、この回顧録で、終戦の翌日、「日本人の精神を効果的に、心理的に再教育するという広汎な計画にとりかかった」と記している。「ウオー・ギルト・インフオメーション・プログラム(戦争の罪を日本に教え込む計画)」は、こうして立案された。それは、敢えていえば、十七世紀に始まった欧米の長い長い「アジア侵略の歴史」を空っとぼけて、最後の日本の侵略主義だけに「すべての罪をなすりつける」アメリカのご都合主義の産物であった。(略) 日本は、このザカリアスの占領政策に、ものの見事にはまった。今もこの影響は続いているのではないか。
続いているのだと思う。
昨今の事態もアメリカの金融政策・経済構造政策に追従しての結果ではないのか。
そのうえ、財界人の多くは、すべてはアメリカの今年の景気しだいと年等の挨拶で言う。
これを嘆いて「田母神論文」のごときものが現れてくるわけだ。
もちろんアメリカに学ぶべきことは多い。A・ワイエスの絵に見られる精神などがそうだと思う。
他国に影響を与えるアメリカの精神の源泉だ。
では日本が誇りをもって輸出できる文化はなんだろう。
アニメや漫画だとよく言われる。でもそれだけでは、すこし悲しいではないか。
そこで私は必要もあって『本阿弥行状記』を拾い読みした。
灰屋紹益が「世に有へき人間とハ覚侍らず」と絶賛した人物である。
『行状記』には「光悦は一生涯へつらい候事至つて嫌ひの人にて、殊更日蓮宗にて信心あつく候‥」(第50段)と語られている。
私たちはこのような人物の行いの有様に、もっともっと心を寄せる必要がありはしないか。